ジプシー・ディグの恋の唄


焼けつくような空の下で
ロバを牽いて荒野を行く
その名はディグ
ジプシー・ディグ
親も知らぬ旅の芸者さ
その日は空が紅く染まったから
近くの村に立ち寄ったのさ

その時僕は見た
輝くベールに包まれた君を見た
追い風に吹かれ振り返ると
そこにはもぅ
影もなかった

追いかけて走った
村人に「あの娘は誰?」
と尋ねてみたが
僕はただの旅の踊り子
貴女は誇り高き王女だったのさ


その夜ディグは考えた
どぅすればもう一度貴女に…
肌の色も瞳の色も
身分さえも違うけれど
貴女に会うには
もうこれしかないと
悪戯を思いついたのさ

僕はリンゴ売りの赤い篭を
一つ持って北へ走った
ホラ ヤツらが来た
全て思い通りさ
そぅ それでいい
僕を捕まえて!

命などいつでも差し出すから
他に何も望まないから
僕の踊りを見て
歌を聴いて
僕の名前を知ってください


本当は君を連れて行きたいけど
僕にはまだ勇気がなくて
僕の名前を知ってもらった
それだけで十分さ

初めから捕まる気なんてさらさら無い
こんな縄なんてすぐにすり抜けられる
もぅ一度一目貴女に会えたら
おさらばさ!


そしてジプシー・ディグは
また果ての無き旅に戻ったのさ
その先に何を求め
どこへ向かうのか
誰一人と知るはずもなく